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 これは、J-School/MAJESTyの学生によるコラムです。日頃の活動のこぼれ話、講義のなかで考えたこと、あるいは休暇中に訪れた旅先で感じたことなど、様々な話題をお届けします。
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斎藤佑樹はヒーローになれるか

斎藤佑樹はヒーローになれるか

  スポーツ新聞やテレビのスポーツニュースで「佑ちゃん」の名前を聞かない日はない。プロ野球・北海道日本ハムファイターズに早大からドラフト1位で入団した斎藤佑樹投手。人気先行から脱却し、プロで実績を伴った真のヒーローになれるのか。大学院生であり、現役のライターでもある筆者が1月の自主トレーニング、2月のキャンプと〝斎藤狂騒曲〟の現場を見た。

【記事執筆:2011/2/4】

佑ちゃんは韓流スター?

  千葉の梨畑の一角に、突如韓流スターが居を構えた。

ことしの1月は、そうとしか思えないような光景を連日目の当たりにした。

 

  日本ハムの選手寮や2軍球場がある鎌ケ谷市。1月12日から30日まで行われた新人合同自主トレーニングには、球団発表で4万7000人もの観客が訪れた。単なる「練習」にも関わらず、平日でも1000人を下回らなかった観客の大半は女性、しかも30代以上が多かった(ように見受けられた)。

  グラウンドの練習を見届け斎藤が寮に引き上げても、女性たちは帰らない。寮の前で待つ。とっぷり日が暮れる午後7時すぎになっても、体が冷え切っても待つ。

  そして、一瞬でも姿が見えようものなら連呼するのだ。「佑ちゃーん」「お願い、こっち向いてー」

  ここは選手とファンの距離が近いことで有名だ。寮と球場の間約100m。ファンは選手と一緒に写真を撮り、選手もサインを求める列に丁寧に応じる。しかし斎藤に関しては混乱を避けるため、ファンとの接触は厳しく制限された。2月1日から沖縄県名護市で始まった春季キャンプも同様で、直にサインをもらうのは、当面難しそうだ。

 

掛け値無しに注目してしまう魅力

 

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  早実高、早大で十分すぎる実績を残して入団した斎藤。プロの試合で1球も投じていない若者が、マスコミによってスターに祭り上げられる。報道で人が集まり、それをまたメディアが報じる。典型的なマッチポンプではあるが、なにがそうさせるのかと考えれば、涼しげな笑顔をまといながら、自分を客観的に見られる能力ではないかと感じる。


  取材で質問を投げかけると、こちらの目をきちんと見て、自分の言葉を紡いで答える。

   声援には微笑とともにお辞儀をして応える。

  プロでの目標や将来像を聞こうものなら「まだ何も始まっていないのでわかりません」とさらっとかわされる。こちらの反応を試すようなときもある。

  自分を客観視できる人間性の高さ。かつ、周囲の喧噪に動じないしたたかさ。これがメディアに流布され、好感を持ったファンが押し寄せる。ああ、またマッチポンプなり・・・。でも、理屈ではない。掛け値なしに注目してしまう。たぶん魅力とはそういうものだ。

 

投球術と強心臓に可能性

  でも、スポーツが求めるのはスターではない。いや正確に言えばスターだけではいけない。求められるのはヒーローだ。

  その前提となるのは実力、実績である。会う人会う人に「佑ちゃんは1軍に入れるのか。プロで通用するのか」と何度も聞かれた。

  開幕1軍入りは揺るがない。これだけ注目を集める選手である。観客数が増え、グッズも売れる。放映権収入、広告収入も増える。楽天・田中将大と投げ合いになれば甲子園決勝の再現となる。カネと人を呼び込み、球界に刺激を与える存在とあれば、2軍という選択肢はない。

  では、実力ではどうか。

  近年、大卒のドラフト1位投手はプロで苦しむケースが目立つ。6球団競合の末、東洋大からソフトバンクに入団した大場翔太は昨季までの3シーズンで4勝10敗。2009年のドラフトで1位指名された大卒投手は阪神・二神一人(法大)、楽天・戸村健次(立大)、オリックス・古川秀一(日本文理大)の3人だが、いずれも1年目に勝ち星は挙げられなかった。

  一方、01年以降の選手で見ると、大卒1年目に10勝以上した投手がダイエー(現ソフトバンク)・和田毅、日本ハム・八木智哉ら5人いる。全員、現在は存在しない自由獲得枠での入団だが、ドラフト1位と同様に考えて差し支えない。計算上、2年に1人は「即戦力」の呼び声通りの活躍をしていることになる。

  結論としては、わからないとしか答えようがない。高校時代を取材している筆者としては、肩周りの動きが硬くなり、しなやかにボールが手元を離れていないことが不安ではある。フォークのように縦に落ちる変化球の精度も必須だ。しかしこうは言える。「スターと呼ばれる選手にはヒーローとして活躍する可能性の素地が必ずある」。

  日本ハムの大渕隆スカウトディレクターは「状況に応じた投球術を持っている。ゲームを作る適応力がある」ことを評価する。同期の西武・大石達也(早大)、巨人・沢村拓一(中大)両投手と比べると、パワーや球威では劣るがクレバーな投球術がある。冷静さは強心臓の持ち主ということでもある。

  周囲に対するしたたかさと、冷静なピッチングを支える強い精神力。キャンプ、オープン戦、そしてシーズンと進む中、22歳はどこで野球人としてのまばゆい光を放つことになるのだろう。

  その時、人気と実力のギャップが埋まり、スターはヒーローになる。

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【大崎哲也】