日本の司法界は現在、変革と混乱の中にある。国民の十分な支持を得ることができないまま開始された裁判員制度はその最たる例だ。混乱の中に身を置く法科大学院生や法科大学院入学を目指す法学部生に、新司法試験と法科大学院教育に関する意見を聞いてみた。
当初の想定を大きく下回る新司法試験の合格率の捉え方についても意見は様々だ。早稲田大学法科大学院1年生の前田優花さんは「合格率は現状より高い方が望ましい」とする。前田さんは「合格率を上げ、一人でも多くの法曹を社会へ輩出するべきだと思います。そうすることで、消費者に弁護士を選択する自由が与えられ、消費者に支持される有能な弁護士が自然と生き残るようになる。弁護士業界にも自由競争が必要。特権階級として全ての弁護士が保護される時代は終わるべきです」と話した。
しかし丸住さんは、この前田さんの考え方に疑問を呈する。丸住さんは「市場原理は弁護士業界ではうまく働かないと思う。現状では弁護士に関する情報を消費者側は十分に持っていないため、有能な弁護士を選択することはできない。法曹の質を確保するためには、やはり司法試験を難化させ、そこで十分に絞るべきだ」と話す。丸住さんは新司法試験が相対評価である点も問題視している。法曹としての質を担保することが目的であるなら、試験で一定の得点に達した受験者全員に資格を与える、絶対評価式の試験に変更すべきだというのだ。
司法改革に関して、それぞれ意見が異なる点も多いが、一致する点もある。それは当初の想定を大きく下回り、3割程度となっている新司法試験の合格率を悲観的に捉えていない点だ。早稲田大学法学部4年生で来年度の法科大学院入学を目指している陶隆輝さんは「合格率が1割にも満たない旧司法試験に比べれば、3,4割の合格率でも十分に高い。頑張れば合格する可能性がある」と話す。同じく早稲田大学法学部4年生の高畑ゆいさんも「旧司法試験に比べればチャンスが広がったことは間違いない。合格率が7,8割を下回ることは、当初の想定より多くの法科大学院が設立された時点でわかっていたことです」と、大きな不安はない。
司法試験合格という目標を達成するために、法曹志望の学生達は日夜必死に勉学に励んでいる。朝から晩まで図書館や自宅にこもり、一日を終えることも珍しくない。彼らの生活サイクルは一般の学生のそれとは大きく異なる。彼らの努力を持続させている源は、法曹として活躍したいという強い思いだ。話を聞いた5人の学生は皆、目標とする法曹像だけではなく、あるべき法曹界の姿という所にまで思いを馳せていた。
司法界は改革の真っただ中にあり、その先行きは不明瞭だ。しかし懸命に努力する学生達の姿越しには、司法界の明るい未来が垣間見える気がした。
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【取材・執筆・撮影:宮前観】