八重山毎日新聞社は、沖縄本島から南東へおよそ400キロに位置する石垣島に本社を置く日本最南端の新聞社だ。南国の新聞社には、普段購読している全国紙と、どのような違いがあるのだろうか。
南の島の新聞社、八重山毎日新聞社は、石垣島を中心に8つの有人島から構成される八重山諸島を主な販売地域とし、約1万6千部の新聞を発行している。月極購読料1700円で朝刊のみの発行だ。紙面は1面と最終面がカラー刷りで、全8面構成と12面構成の日とに分かれている。「視野は世界・視点は郷土」を社訓に、八重山諸島のニュースを中心とした紙面構成をとっており、県外及び海外のニュースは、時事通信社から配信を受けている。

編集局にはデスクを含め11名の記者が在籍しており、うち2名が那覇支局で取材活動にあたっている。記者の服装はみなラフだ。スニーカー履きにジーパン、八重山伝統のミンサー織りのシャツをはおるといった格好で取材に赴く。その身軽な服装は、南国の暑さゆえでもあるが、取材先が多岐に渡ることが一番の理由だ。各記者には教育、スポーツなど一応の担当があるものの、限られた人数ゆえ専門外の取材を行うことも多い。午前中は市役所など市街地を回り、午後から山間部や農畜産業の取材へ足を運ぶことも珍しくないのだ。このため、動きやすく、汚れが目立たない服装が好まれる。
この飾らない服装も理由の一つだが、八重山毎日新聞の記者と島民の距離は非常に近い。そしてこの「身近さ」こそが郷土紙記者の最大の武器だ。社には八重山各島からひっきりなしに取材依頼が来る。取材へ赴けば、取材中に次の取材依頼を受ける。取材を依頼する相手方にかしこまる、あるいは気おくれするといった素振りはない。記者も笑顔で依頼を受ける。この島民との距離の近さは、取材時に相手の本音を引き出すことを容易にする。島中に知り合いと友人がいるという状況は、追加取材も容易にする。また社として、記事中にできる限り島民の名前を載せる方針を採っている。写真についても同様で、一人でも多くの「顔」が見える写真を掲載するように心がけている。こうした努力が島民と新聞社との距離を一層縮めてゆくのだ。
とはいえ、距離が近いのは記者と取材相手だけではない。島社会ゆえ島民それぞれの距離も近い。この距離感の近さが記事を書く上で問題になる場合も多い。島では記事に実名を載せると簡単に本人が特定されてしまう。そのため自殺や犯罪行為の容疑者などに関しては、実名報道にするか否かの判断が難しくなる。新型インフルエンザについても、患者の発生によって休園となった幼稚園が簡単には特定されないように配慮された記事となっていた。