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昆虫の翅(はね)の起源を探る

昆虫の翅(はね)の起源を探る

2009年12月の日本分子生物学会で、翅の起源について新しい説を発表した、理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの丹羽尚研究員に話を聞いた。

取材・執筆:矢部あずさ
2.26.2010
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  チョウ、トンボ、カブトムシ…、昆虫はそれぞれ個性豊かな特徴をもつ。翅(はね)の色や形もさまざまだ。ほかの生物にさきがけて翅を得た昆虫の仲間は、一気に地球上のいたる所へと広がった。しかし、昆虫がどのように翅を得たのかはよくわかっていないという。

 

謎に包まれた翅の起源

  いまから4億年ほど前のデボン紀には、翅を持つ昆虫が登場した。昆虫が翅を持つようになったのは、地球上に現れてから2千万年ほど経ったころ。丹羽さんは「翅の進化過程を示すような化石は残っていないんです。翅は急に現れた」と話す。翅を持たない昆虫から、背中に翅をもつ昆虫へと段階的な変化を示す一連の化石記録は見つかっていないのだ。

  翅の特徴は、平たい構造をしており、筋肉が直結していて動かすことができ、そして背中を覆う板(背板)から生えていること。翅は脚(あし)と同様に、「付属肢(ふぞくし)」に分類される。

  翅の起源を探るため、丹羽さんたちは2種類の昆虫、カゲロウとイシノミを使って研究を行ってきた(図1)。カゲロウは昆虫のなかでも翅を獲得した直後の姿を残しているといわれている。カゲロウの幼虫は,水中で呼吸をするために使う「気管鰓(きかんさい)」という付属肢を持っている。

  イシノミは翅を持たないが、「腹刺(ふくし)」という付属肢を持つ。腹刺はその名のとおり腹部から生えている刺(とげ)で、丹羽さんによると「付属肢の一部での、腹部が地面に触れているかのチェック、もしくは腹部を支えるために使われているのではないか」という。丹羽さんたちは、これらの付属肢の発生に関わる遺伝子を調べることで、翅の起源を探ろうとした。どうしてこれらの付属肢に注目したのだろうか。

 

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図1:今回の研究で使われた昆虫の系統図と、それぞれが持つ付属肢の顕微鏡写真。いずれの付属肢も機能や位置が異なる。(提供:丹羽研究員)

矛盾のない説明をしたい

  翅の起源については大きく分けて2つの説がある。1つは「付属肢に生じた器官が変化したもので、その位置が徐々に背側に移動してきた」と考える「付属肢器官起源説」。この説では、気管鰓や腹刺のような付属肢由来の器官が変化して翅になったと考える。

 もう1つは「全く新しいものが背板から出てきた」とする「側背板起源説」。側背板とは、背板の側面側の部分だ。どちらの説も古くからあるが、翅のすべての特徴を説明できないためにどちらが正しいかの決着はいまだついていない。

  付属肢器官起源説では背板に翅が存在することや、翅のもつ独特な形をうまく説明できない。一方、側背板起源説にとっての障害は翅の可動性の説明だ。そしてどちらの説も、翅の急速な進化を説明できない。そこで丹羽さんたちは、いままでの問題を矛盾なく説明できる、両方の説を取り入れたコンビネーションモデルを提案した。この説では、付属肢に腹刺などの器官を作る際に活動する遺伝子が、背板の特定の部位で活動することによって翅が作られるとする。

 

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