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花粉症を根本から治すために 舌下免疫療法

花粉症を根本から治すために 舌下免疫療法

 スギ花粉症の患者が近年急増している。98年には国民の罹病率は16.2%だったが、08年には26.5%に達した。花粉症による労働生産性や生活の質の低下も、社会問題として指摘されるようになった。現在おもに行われている、抗アレルギー剤などの薬を用いる対症療法は、あくまで一時的に症状を和らげるもので、花粉症を「治す」ものではない。

 それに対して唯一、花粉症を「治す」可能性があるのが免疫療法である。これは、原因となる抗原を体内に取り込むことで患者の体質を変える治療法である。その一つ、舌下免疫療法について、第59回日本アレルギー学会秋季学術大会にて講演した、千葉大学大学院医学研究院の堀口茂俊医師に話を聞いた。

 【トップ写真提供:千葉大学大学院医学研究院 堀口茂俊医師】

取材・執筆:矢部あずさ 撮影:田村真樹夫
2009.12.14
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広まらなかった皮下注射法

 免疫療法の歴史は100年以上に及ぶ。日本でもスギ花粉症に対する免疫療法として皮下注射法が行われてきた。「原理は非常に簡単で、スギ花粉を体に徐々に慣れさせていくのです。アレルギーを引き起こす抗原を、症状が出ないくらい非常に薄い濃度で皮膚の下に注射します。そこから徐々に濃度を上げて注射を繰り返していくと、かなり高濃度であっても反応が起こらなくなります」。日常の生活で症状が現れないほど十分な濃度に達するまでには、2年以上の時間をかけて、合計50回以上の注射が必要である。

 皮下注射法は効果の高い治療だが、広く受け入れられていない。それは「2年間以上、50回以上の注射というのはかなりの負担です。その上、低い頻度ながら強い副作用症状が出て家に帰れないこともありえる」からだ。患者にこれを説明すると、多くの人はこの療法を選ばない。注射に伴う痛みはもちろん、時には命をおびやかすこともあるアナフィラキシーなどの副作用のリスクがある。このように皮下注射法は、医師にも患者にもリスクの高さとつらさがつきまとう。

 こうした負担を軽減するのが舌下免疫療法だ。この方法の利点は痛みがないこと、そして副作用のリスクが低く安全性が高いことである。アナフィラキシーはスギ花粉症の舌下免疫療法では今までに報告がない。また、自宅において自分で治療を行うことができ、1日の治療回数を増やして短期間で治療をすることも可能になる。

 舌下免疫療法では、海外から日本に伝わったときには、パン(保持剤と呼ばれる)を舌の下に置き、そこに抗原エキスを滴下していた。現在は1mlずつ出てくる特殊な容器を使い、粘性が高くとろりとした薬を直接舌の下へ滴下する方法が用いられている。この方法なら、保持剤を準備する手間も不要だ。


どうして舌の下なのか?

 しかし、なぜ舌の下なのだろうか。これまで、抗原を鼻から摂取する方法や、食べる方法、同じ舌下からでも後で抗原を吐き出すのか、飲み込むのかなどいろいろな実験がされてきた。「すごく不思議なんですよ。同じ粘膜でも、腸管では違う結果が出ます。実際、花粉症のネズミの胃に直接抗原を入れて免疫治療をしてみてもあまり治らない。でも、ネズミの舌の下に抗原を置いておくと、こっちは治ってしまう。」

 「ただ最近、粘膜の抗原の吸収の仕方が、腸管で吸収されるのと口の中で吸収されるのとでは違うとわかってきたんです」。スギ花粉のおもな抗原は特別なタンパク質。鼻や肺、気管支の粘膜が出会う外来タンパク抗原は、おもに体に取り付いて害をなす微生物由来が多いのに対し、さまざまな未知の食べ物由来のタンパク抗原と触れる機会の多い口の粘膜では、免疫応答も寛容にはたらくのではないかと堀口医師は話す。

 また、堀口医師らは現在、抗原が体内のどこへ移動するのかを調べる「トレーサー試験」を行っている。その結果、鼻の場合と口の場合では、別々の免疫器官(リンパ節)に抗原が移動していることがわかった。抗原の処理のしくみが異なることについて調べ、そこで何が起きているのかを確かめることで、本当のことがわかるのだという。いまは「なぜそうなっているのか」を調べている段階だ。

 

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