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早大生に愛された理髪店、45年の幕を閉じる

早大生に愛された理髪店、45年の幕を閉じる

 2009年の夏、1軒の理髪店が店を閉じた。早稲田大学南門前で45年間、学生たちの髪を切ってきた「ヘアーサロン ホソカワ」だ。7月30日、長い間親しまれた店とその閉店を惜しむ学生たちやOBの1日を追った。
【写真:東京都新宿区戸塚町「ヘアーサロン ホソカワ」外観】

執筆・撮影:山下真規恵
2009.10.27
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団長さんから最後の挨拶

 閉店時刻の午後7時前、学ラン姿の背の高い学生が店のドアを開けた。店員の城石津佐子さん(61)が「あらー、団長さん」とうれしそうに声をあげた。早稲田大学応援部主将で教育学部4年の山本遼太郎さん(23)だ。入り口で一礼した山本さんは、「お世話になりました」と言って城石さんと渡部ちづ子さん(45)に色紙を手渡した。(写真:応援部団長・山本遼太郎さんから色紙を贈られる城石津佐子さん(右)と渡部ちづ子さん(左))


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 「『ホソカワ』は我々の心の中で永遠に続きます」。色紙は応援部員の思いが込められた言葉で埋まっていた。寄せ書きに目をやった瞬間、それまでいつもと変わらず明るく接客していた城石さんと渡部さんの表情に初めて寂しさが漂った。


開業は東京五輪の年

 南門の斜め向かいにある古い理髪店の窓には、春には卒入学を祝うポスターが、オリンピックや六大学野球などで早大生が好成績をあげたときにはお祝いの言葉が張ってあった。早稲田大学に関連した行事があるとお祝いムードに包まれる、南門通り商店会の約40の店のひとつだ。

 理髪店「ヘアーサロン ホソカワ」は1964(昭和39)年、東京オリンピックの年に開業した。2005年に初代店主が80歳になったのを機に引退した後も、当時働いていた城石さんが店を引き継ぎ、同僚だった渡部さんと2人で営業を続けてきた。しかし、賃貸で借りていた店舗の持ち主の意向で、同じ場所で営業を続けることができなくなり、今回閉店することになった。
 料金は顔剃り付きの総合カットが3千円、シャンプーの付いたカットオンリーが1800円。学生たちにぜいたくはさせない。「今日は総合カットにして」と注文しても、城石さんは「だめよ、総合カットは働いてからにしなさい」とたしなめてきた。「昔はおどおどして店に入ってくる新入生がいたけれど、最近の学生さんは平気。世間慣れした人が多いみたい」。ホソカワで髪を切って約18年になる城石さんが見る、学生たちの変化だ。


応援部御用達

 最終日のこの日、午後3時以降は予約でいっぱいになった。予約なしでやってきたお客に「ごめんなさい」「最後に会えてよかった」「またどこかで会いましょう」と言葉を交わし、握手した。「長い間お疲れ様でした」とねぎらいの言葉をかけ、残念そうに帰る人、お世話になったお礼に、とお菓子だけ置いていくお客もいた。「最終日に行きたかったけど、行けなくなった」というお客からの電話には、散髪の手を休めて、2人が交互に電話口に出た。「次のお店が決まったら連絡して」と名刺を置いていく人、住所を書いて渡す人もいた。


 待合席に早稲田大学応援部の部員が並んで座っていた。
 応援部には大学4年間、ホソカワに通う部員が多い。入学後、1年生が上級生に連れられて来るのが恒例だ。卒業式の日には部員だけでなく保護者が挨拶に訪れることも少なくない。応援部の髪型は1、2年生が角刈り、3年生になるとアイロンパーマでオールバックと決まっている。部員で政治経済学部4年の山内耕平さん(23)も入学以来ホソカワに毎月通ってきた1人だ。「かわいがっていただいたので、お二方にお会いできなくなるのが残念。卒業後も通うつもりだったのに」と話す。

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