早稲田大学でできる天体観測,と聞いてどんな想像をするだろうか。プラネタリウム?それとも望遠鏡?肉眼では見えない星に出会うために都会で天体観測が行われていた・・・もうひとつの宇宙「電波天文学」への招待。今宵,空を見上げてみませんか?
このような激しい研究競争の中で研究を始めるにあたって、大師堂先生は今までの電波干渉計の欠点に注目しました。VLAは、アンテナの間隔を変えられるようにした干渉計方式の電波望遠鏡であり,天体から放射された電波をアンテナの間隔を変えながら何ヶ月にも渡って観測します。沢山のアンテナを使っていますが、得る情報は、すべてのアンテナからペアとなるすべての組み合わせを考えて、各ペアが作り出す様々な干渉縞を毎日ため込んでいきます。
同じ天体を何回にも分けて観測しなければならないので、途中で明るさや構造が変わってしまうような天体はうまく観測することができません。必要なすべての干渉縞をとり終わるまで、天体は同じ状態をたもっていなければなりません。 このような制限があるため、短時間で変動する天体を観測するには、別の方法を考えねばなりません。
そこで先生は、64台のアンテナを等間隔に2次元的に設置する観測装置を思い立ちました。64台のアンテナで受けたそれぞれの電波の波の様子は、天体の方向が異なると山と山が重なったり山と谷が重なったりします。もちろん、これは世界で初めての試みでした。
とはいえ、このように巨大な観測装置の建設にはたいへんなお金がかかります。年度ごとでしか予算がつかない状況下では、いかに安く建設するかが最大の問題でした。校舎の屋上に建設したアンテナの受信機に衛星放送受信機を改造して用いたのは、なによりも「費用がかからない」からだったのです。苦労の末に完成したこの電波望遠鏡によって、先生は今までにない「星の動く姿」をとらえることに成功しました。
大師堂先生は現在、栃木県那須高原に設置した8台の直径20mの電波望遠鏡でも天体観測を行なっています。この望遠鏡も、先生独自のアイディアが活かされた新しい形のアンテナが採用されています。1日だけ明るく輝く電波天体が次々と発見され、多くの大学院生が博士論文を書いています。VLAの観測グループも、過去のデータを再解析して、似た天体の存在を確認しました。新しい観測方法を見出すと、世界も対等な競争相手とみなすようになります。
目の前にあるものだけにとらわれない自由な発想で、先生は電波天文学の最先端を走り続けているのです。
「今まで見ていなかった領域を見ることが、ものすごく面白い」――宇宙の魅力をこう語る大師堂先生は、天文学の「文化」としての側面を強調します。
古代より人々は、星々をつぶさに観察してきました。宇宙は人々の憧れと想像をかきたて、そこから芸術や思想など、様々なものが生まれました。それらは今でも、文化の一部として私たちの生活の中に息づいています。大師堂先生の研究は、はるか頭上に広がる「新しい世界」の存在とその面白さを、改めて私たちに教えてくれます。尽きせぬ世界の広がりを楽しむことができる、そんな豊かな文化を大事にしたいものです。
研究だけでなく、先生は教育活動も熱心に行なっています。先生は学生たちの中にも、未だ見えない「星」を見出そうとしているのかもしれません。
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※この記事は、2007年後期のMAJESTy講義「科学コミュニケーション実習1A」において、横山広美先生の指導のもとに作成しました。