早稲田大学出身のプロボクサーがいる。殿村雅史(とのむら まさふみ)26歳。角海老宝石ボクシングジムに所属する、日本フライ級7位のボクサーだ。
2009年6月24日の試合は、彼にとって大きな意味を持つ一戦となった。初めて日本ランカーとなって臨む試合。相手は、その日本ランクを奪われた金城智哉。立場を逆にしての再戦となった。
その後、デビューから4連勝。これまでに17戦11勝(5KO)5敗1分けの戦績を残している。その間に大学を卒業したが、ボクシングを辞めるという選択肢は考えなかった。
「ボクシングを、やるだけやりたかった。だから、就職活動も一切しなかった」
現在はスポーツクラブで9時から15時までアルバイトをする以外は、ボクシングに没頭している。
ボクシング界ではタブーとされている、所属ジムの移籍も経験した。「ボクシングを始めた時からずっと教わっていたトレーナーが辞めてしまって。色々考えたんですが、移籍をしようって」。
現在所属している角海老宝石ボクシングジムは、これまでに3名の世界チャンピオンを輩出している名門ジムである。このジムに移籍を決めたのは「直感です。とにかく雰囲気が良かった。スパーリングの相手も強い選手ばかりで」と説明した。
移籍後の初戦(2007年2月22日)をKO勝利で飾ったが、その後2連敗。でも、辞めようとは思わなかった。
「限界を感じたら辞めたかもしれないです。でもそうは感じなかった。まだ、出し切れていない。自分に不足しているものを補えていないと感じたんです」。
ボクシングというスポーツは、殴り合う、という特性のためか、スポーツとしての認知度は高くても、一般に幅広く受け入れられている、とは言い難い。それでも、ボクサーが戦い続けるのはなぜだろうか。
「もちろんボクシングが好きだから、ということになりますが、好きなだけではやっていけないかもしれません。やはり夢があるからですね」と殿村は語る。「僕の場合、ボクシングを始めたのは、チャンピオンになりたいと思ったからなんです」。
いざ始めてみると、チャンピオンになる難しさにすぐ気づいた。順風満帆で来た訳でもない。しかし、日本ランキングにも入り、少しずつ自信もついてきたのも確か。「この先、自分がどこまで行けるか、試してみたいんです」
そして、取材の間、笑顔を絶やすことのなかった殿村の目が、鋭くなった。「やっぱりベルトを巻きたいです。だから頑張れる。ボクシングを続けていることに対しては、正直なところ理解してもらえないこともあります。でも僕は本当にボクシングをやって良かったと思いますし、これからも精一杯頑張って、チャンスが巡ってきたら絶対モノにするつもりです」
現在日本フライ級7位。チャンピオンへの道のりはこれからが本番だ。
![]()
※この記事は、09年J-School講義「ニューズルームG」において、富重圭以子先生の指導のもとに作成しました。