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生物学とアート、そして生命 ~研究者の心の旅

生物学とアート、そして生命 ~研究者の心の旅

「バイオリズム」をうたった占いや、雑誌の記事を読んだことのある人は多いだろう。少し疑似科学的なその言葉とは別に、生物は、誰に教えられることなく各々に特有の形を作り、そして固有のリズムを持って生きている。その生物が持つ固有のリズム=概日性を、構成的手法を用いて研究する一方、生命の奥行きを芸術により表現する。そんなユニークな研究者の思索の森を、ほんの少しだけ垣間見る機会を得た。

大山聡美
8.3.2009

 今回、早稲田大学理工学術院細胞分子ネットワーク研究室の岩崎秀雄准教授にお話をうかがった。岩崎准教授は先進理工学部電気・情報生命工学科で、2005年から教鞭をとる。シアノバクテリアという微生物を用いて生体内の概日リズムを研究すると同時に、切り絵などを使った造形作家活動も行う。
 微生物研究で用いられる「構成的手法」とは、実際の生物の作用モデル、現象を再「構成」し、そのメカニズムや妥当性を検討する比較的新しい手法だ。岩崎准教授は生物の営みを研究しながら、日々何を考えるのか。また、同時に芸術表現をするのはなぜなのだろうか。


意識と無意識のあいだ~そこからやってくるもの

 研究室に入った私の目を引いたものは、フラスコを組みあわせた立体アートと、その向こうに展示される、切り絵とモノクロ映像のコラボレーションアートだった。不思議な映像の正体は、岩崎准教授が概日リズムの研究に用いている微生物の群れだ。顕微鏡下で撮影された生物の流体は、集合体自体がひとつの生き物のように、渦を巻き形を変える。


「彼らはなにを考えてるんでしょうねえ。でもおそらく、彼らは無意識に、規則性を持ってこの模様を描いている」
映像を眺めながら岩崎准教授はつぶやいた。


 繊細な黒いレースを思わせる切り絵と、映像が壁面で調和する。無機物と有機物が織り成すその様は、ある種、幾何学的でもありながら決して無機的ではない。室内に展示されているアートは、切り絵という伝統的な技法と、生物を用いた新しい技法が一体となって、見るものに強い印象を残す。その切り絵を作る際は、下書きをしないという。


「出来上がりは全く決めていなくて、即興が多いです」


 1日に仕上げられる範囲は掌大よりも小さく、1つの作品を数カ月にわたって制作することも多い。

「時間がかかる即興の落書きです。意識した自分の創作行為と微生物が無意識に描いている物、そのあいだにあるものが面白いなと思う」

 無意識のうちに群れ集い形をなす生物と、意識をもって創作にあたる人間。だが創作の合間、空白の時間も、無意識の中でイメージが形作られているとも語った。2つの生物が意識と無意識のあいだで繰り広げることが、アートとして具現化される。


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岩崎秀雄准教授と研究室。室中にフラスコを用いたアートが展示されている。