筑紫哲也氏追悼シンポジウムの第一部は、「『筑紫哲也』考」としてスタートした。
シンポジウムの始めに、筑紫哲也氏との関わりや人となりなどについて、金平茂紀さん、姜尚中さん、道傳愛子さんが語った。

道傳 私は20代終わりの1994年、ニュースの背景を体系的に勉強したいと考えてコロンビア大学の大学院に留学しました。アナウンサー、キャスターはテレビに出続けてこそ、というアドバイスもありましたが、NHKが認めてくれました。
あるとき大学へ行くバスに乗っていると、ニューヨーカーみたいなラフな格好をした日本人が乗ってこられて...それが筑紫さんでした。私は新聞やテレビなどで、顔をよく存じ上げていましたが、筑紫さんのほうは私のことを知らないだろうと思っていました。すると筑紫さんから近づいてきて、前からの知り合いのように「こんなとこでどうしたの」とおっしゃって下さったのです。
田原 そういうところがすごいんだよな。
道傳 バスのなかでアメリカ留学の経緯をお話しました。停留所2つ分の短い会話でしたが、筑紫さんは「それはよかったね。おめでとう。とってもいい決断をしたね」とおっしゃってくれました。
このとき筑紫さんがおっしゃったことが2点あります。
ひとつは、「アメリカで息をしているだけできっとアメリカを感じられるだろう。たとえ家でぼんやりテレビを見ていても、ニュースやコマーシャルから得られるものは、大変な情報量だ」ということ。
もうひとつは、「日々の生活の中で、例えば『セキュリティ』という言葉の延長に、安全保障のセキュリティという言葉がある。アメリカ人がセキュリティという言葉を使う時に、どういう皮膚感覚で言っているのかも生活をしていればわかるだろう」ということです。 筑紫さんからは、このときの会話で留学生活とその後のジャーナリスト活動の道しるべを頂いたような気がします。
田原 セキュリティというのは、アメリカは治安が悪いということから国の安全保障まで考えが及ぶということ?
道傳 つまりアメリカ人がそのセキュリティ、という言葉を使う時、「安全保障」という意味だけでなく、市民の生活の感覚の延長でもまたとらえられている、という意味のように感じました。
道傳愛子(どうでん・あいこ)
NHK解説委員。東京生まれ。上智大学外国語学部英語学科卒。
NHK入局後、「サンデースポーツ」「ミッドナイトジャーナル」キャスターを担当。94年米コロンビア大学大学院に留学し、国際政治学修士号を取得。「NHKニュースおはよう日本」「NHKニュース9」を経て、バンコク支局特派員としてタイ、ミャンマーなどを取材。その後「NHK海外ネットワーク」を担当し、2007年より国際情勢担当解説委員。
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