筑紫哲也氏追悼シンポジウムの第一部は、「『筑紫哲也』考」としてスタートした。
シンポジウムの始めに、筑紫哲也氏との関わりや人となりなどについて、金平茂紀さん、姜尚中さん、道傳愛子さんが語った。
田原 田原総一朗です。よろしくお願いします。
私は筑紫哲也さんと、とても仲が良かったのですが、大変残念なことに去年11月7日に亡くなられました。まだまだ活躍してほしいジャーナリストでした。
筑紫さんがニュース23を始めたのは、89年の10月でした。その前から朝日新聞のなかでも、有望な記者でした。沖縄特派員だったときに―ちょうど沖縄返還の時と重なるのですが―非常に鋭い文章を沖縄から書いていました。そこで筑紫哲也という名前を知りました。
また、筑紫さんは運もいいのです。74年にワシントンに行き、ニクソン政権のウォーターゲート事件のときも、ワシントンから素晴らしい鋭い記事を書いていました。「朝日には筑紫哲也という男がいる」ということを、つくづく思い知らされました。
さらに、朝日ジャーナルの雑誌編集をしました。若い人たちを「新人類」と呼び、若者たちに関する本を何冊か書きました。生まれついてのジャーナリストだったと思います。今日はまず、筑紫さんの活躍を振り返りながら、ジャーナリズムとはなにか、これからどうあるべきかという話を皆さんと議論していきたいと思います。
田原総一朗(たはら・そういちろう)
評論家・ジャーナリスト。1934年滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒。 岩波映画製作所、テレビ東京を経て、77年フリーに。活字と放送の両メディアにわたり精力的な評論活動を続けている。
「朝まで生テレビ」、「サンデープロジェクト」(テレビ朝日)などにレギュラー出演。 98年ギャラクシー35周年記念賞(城戸賞)を受賞。2002年より早稲田大学で「大隈塾」を開講。2005年より早稲田大学特命教授。著書に「再生日本」など。
最初に、筑紫さんの人となりについて、具体的な触れ合いやエピソードを交え、パネリストのみなさんに伺いたいと思います。
まず、筑紫さんが23をやっていたときにプロデューサーだった金平さん、お願いします。

金平 こちら(ニューヨーク)は午前3時です。(会場笑い)
私は、ニュース23のプロデューサーではなく、デスクとして8年間携わり、その後も色々な局面で筑紫さんと深い関わりを持ちました。まず私は、4つのことを述べたいと思います。
1つ目に、このシンポジウムは筑紫さんの業績を讃えて褒め上げるだけでは故人の遺志に沿わないだろう、ということです。筑紫さんが何を目指していて、何と戦っていて、その意思を継ぐことについて何が今障害となっているのか、ということについて話し合うのが重要ではないかと思います。
2つ目に、筑紫さんは、新聞、雑誌、テレビまたはアカデミズムなど所属先によって自分の能力を住み分けしていくような生き方を嫌っていました。むしろ、そういったジャンル間の垣根を壊していこうとしていたのを、僕は傍らで見ていました。日本は、メディア同士で足の引っ張り合いをしている。なぜ、アカデミズムとジャーナリズムがお互いに高め合うような関係にならないのか、といったことを考えるべきではないかと思います。
3つ目に、筑紫さんのような、相対立する人の間に立って触媒のような働きをする人は極めて稀な存在だと思います。筑紫さんのライフワークの1つに挙げられるのが、ロッキード事件です。ロッキード事件は、負の遺産を生んだ。例えば、立花隆さんと田中真紀子さんは、2人だけだと絶対に同席しません。その理由は皆さんもご存知だと思います。ところが、筑紫さんは立花さんと田中真紀子さんのお2人と同時にお付き合いをして、双方から信頼を得ている。そういうジャーリストとしての資質を横で見ていて、どうしてそういうことができるのだろうと常々考えさせられました。
最後に、筑紫さんという人は、実に生臭い人だったということですね。食べ物が好きだし、酒を飲むのも好きだし、女性も好きだし、よくモテた。ジャーナリストに必要な、野次馬根性というか、好奇心の塊みたいなところがありました。それがしかも、下品な方向に流れない。品性とかある種の含羞というか舶来というものを保ちながら、自分のやりたいことをやっていた。ジャーナリストとして必要な資質は何なのかということを考える上で、色々なことを教えられました。
田原 筑紫さんのモテかたは、僕も本当に羨ましかったなぁ。
金平茂紀(かねひら・しげのり)
TBSアメリカ総局長。1953年北海道生まれ。東京大学文学部卒。
1977年TBS入社。以降、報道局社会部、外信部、モスクワ支局長を経て、1994年から8年間、「筑紫哲也NEWS23」担当デスク。その後、ワシントン支局長、本社報道局長を務め、2008年7月よりアメリカ総局長(在ニューヨーク)。2004年度「ボーン・上田国際記者賞」を受賞。著書に「ロシアより愛をこめて」「テレビニュースは終わらない」など。
本シンポジウムには、ニューヨークからネット中継で参加した。