早稲田大学ジャーナリズム大学院のウェブマガジン

Spork!  WASEDA School of Journalism WEB Magazine

Topics

筑紫哲也氏追悼シンポジウム(3): 日本の政治報道が抱える諸問題

筑紫哲也氏追悼シンポジウム(3): 日本の政治報道が抱える諸問題

「日本の政治報道はレベルが低い」、と金平さんは指摘する。日本の政治報道のレベルは本当に低いのか。またそのレベルの低さとは一体、何に起因すると考えられているのだろうか。

編集:高橋嵩、孫巍、元ヨンア
2009.7.31
記者会見の意義

0906_chikushi_tahara10_2.jpg

田原 今、政治部の記者がだらけてる、だらけてると言う話が出ています。だけどさっきも出た様に、辞任会見で、何で福田さんが辞めたのかを聞かないかというと、それはみんなが知っているから聞かないのであって。
 私はあの会見後すぐに、福田さんが辞めたのは、解散ができないからだ。選挙が嫌いだからだと言った。福田さんはとっても良いジェントルマンだけど、戦いが嫌い、選挙が大嫌い。だから辞めて選挙ができる男を選ぶんだと。で選ばれたのは麻生太郎。この男がまた選挙をしないから、支持率がどんどん落ちている。

 

田勢 ちょっと良いですか。先ほど(福田首相の辞任会見で「私はあなたとは違う」と言う言葉を引き出した記者は見事だ、と)のように思っていられる方が日本には多いと思う。そしてこれは物凄く怖いことだと思ってる。
 内閣総理大臣というのは、自分たちが選んだ衆議院、参議員の議員が本会議で投票して指名される。指名されて天皇が認証して、初めてそのポストに就くんですね。物凄く重い、これ以上重いポストはないんです。そういうポストについている人間が、さほど目に見えた失敗もない、スキャンダルもない、しかしながら自分は国家運営の最高責任者が務まらないと、そこで降りると。
 そういう記者会見で果たして他人事のように喋る人がどこにいますかと、なぜあの記者は聞いたのかと。私には目立とうとしていたとしか思えないのです。私は、それは最近の政治記者の物凄く悪いところだと思うんですね。NHKが全国に生中継しているわけで、あれほど目立つ場はないんです。最後まで全部放送するんですね。そこでこの記者は目立とうとしたと、必ず評判になるんですよ。評判になるためには、総理大臣が怒ることをきけば良いんですよ、簡単なことなんです。私はそういう席に40年いたんだからすぐわかる。
 本当のジャーナリスト仕事は、足で稼いで、事実を集めて、自分が書かなければ明らかにならない、歴史を変えるようなことをやることです。しかしそういう仕事を今、誰もしていないんですね。

 

田原 目立とうとするのは良くないの?

 

田勢 いやいや。

 

田原 スクープっていうのは全部目立とうとするわけで。

 

0906_chikushi_tase10.jpg

田勢 すなわち私は、やっぱり国家運営の最高責任者に対しては一定の礼儀をもって対応すべきではないかと。
 たとえば最近私はアメリカの民主党員の友人に会った際に、ブッシュを相当批判したんですよ。すると最後に彼は、「外国人のお前にそんなことを言われる筋合いはない」と怒り出しました。
 やっぱり、総理大臣は日本国のしかるべき憲法の手続きに基づいて天皇が認証した最高のポストにいる人間だから、いかにジャーナリストといえども、一定の礼儀というのは必要なんじゃないかと思います。このまんまやったら、誰も内閣総理大臣になりたい人いませんよ。散々バカにされるだけですから。

 

田原 金平さん、今の田勢さんの意見どうですか?

 

金平 記者会見で一番聞きたいことを聞かない、というのでは記者会見の意味はないと思います。
 なぜ夜討ち朝駆けの非公式な方法が優先されるかが、私には分かりません。例えばアメリカのホワイトハウスの記者会見では誰もが争って目立とうとします。聞くべき時に正々堂々と聞かないという会見だと、単なる形式に過ぎなくなる。だから僕は、会見の際に最高権力に対する敬意を払わなければならないということは理解できません。

 

田勢 それはまず、ホワイトハウスでは日本とは異なり、昨日今日に記者になった者が番記者をやっているわけではないということと、どんな大統領でもアメリカでは一定の礼儀をわきまえていることが関係しているのではないでしょうか。

 

田原 野村さんに聞きたい。番記者に何にも知らない新人をつけるのが最大の問題だと思います。なぜそうするのでしょうか。

 

野村 総理大臣に会うことだけが目的ではないからです。総理大臣のところにどんな人が出入りするか、党と官邸の関係、各省との関係が良く見えるところに彼らはいます。

 

田原 だからベテランを送ればいいんじゃないですか。

 

野村 おっしゃるとおりです。だから新聞社の政治記者は新米の番記者にはレポートだけさせて、上に判断させている。
 1972年に、佐藤栄作首相が「新聞記者は出て行け」といい、TVだけの引退会見をした事件がありました。私たちはそれまでは「記者会見では大事なことは聞くな。大事なことはサシで聞け」と言われていたんです。記者会見の場で重要なことを聞く記者はむしろバカにされていました。 しかしその後、時代は変わりました。TVにうつるときに「大事なことは後で、サシで聞けばいいや」というように同じ姿勢でやっていたらダメです。問い詰める状況を作る側にまわっていることを我々記者も認識しなければいけません。

 

j-logo-small.gif