「日本の政治報道はレベルが低い」、と金平さんは指摘する。日本の政治報道のレベルは本当に低いのか。またそのレベルの低さとは一体、何に起因すると考えられているのだろうか。
田原 なるほど。まあ、今の話はともかくとして道傳さんにちょっとお聞きしたいんですが、よくNHKは政治に弱いと。どうも政治家の圧力がかかって本当のことを放送できないと。たとえば昔、朝日新聞が書いたんだけど、NHKが作った番組を自民党の安倍普三さんと、中川さんが恫喝をして、変えたと。そういう圧力というのは、あるんですか。
道傳 それは今日の趣旨とは違うんじゃないでしょうか。
田原 いや、まさにそれが趣旨ですよ!
道傳 私は詳細をこういう場で申し上げる立場にはありません。
田原 そういうこと言うのがNHKの問題点ですよ。

道傳 ちょっとその代わりに申し上げたいことが何点かあります。一つは今のお話をうかがっていて、日本のメディアの特性として、ジャーナリストであることと、サラリーマンつまり組織の人間であることが並立するときと、そこに相いれない部分があるということです。そういう葛藤をそれぞれの記者、ディレクターは感じながら取材をしているんじゃないかなと思いました。
ですから姜さんがさきほどおっしゃったように、他社を含めて若い記者が「ウチの先生がさ」などと言った時に、ウチの先生って誰のことかなと思っていると、番記者として担当している政治家のことを言っていると。だから、そういうような構造は確かにあり、それを嫌うという意見が生まれるのではないかと思います。
今でも、若い記者たちは「夜討ち・朝駆け」みたいなことをやります。私自身は政治部におりませんでしたが、東南アジアのバンコクでそれに似たような取材の仕方をしていました。すると、面白いように情報が取れてしまうのです。これは日本の記者の特性ではあるのかなと思うんですが、そこをどういう風に言っても始まらないところもあります。そうであれば、現場の記者の取材がある一方で、たとえば新聞の論説だったり、あるいは田原さんのような立場にある方だったりと、そういう人たちが広くジャーナリズムを総体として作り上げていくという、そういう現場との役割分担みたいなものを考えるべきではないかなと思いました。
田原 あの、野村さん。僕は「夜討ち・朝駆け」は絶対必要だと思ってます。今の記者はそれらをやらなさすぎる。
それから今の記者が劣化したのは携帯電話のせいですよ。携帯で政治家に電話して、どう?って聞いて、それを取材したという話もあります。一方で政治家は「携帯の取材だからいい加減に答えた」、と言う。朝日新聞のジャーナリズム学校では、そういう取材はダメだと教えているんでしょうね?
野村 いや私は本当に、政治記者の取材がいけないとは思わないんですね。ちゃんと食いこんで政治家から本音を引き出すという取材がないとダメです。
今総理大臣は、毎日TVに数分間出てきて喋るわけですね。だからそれが本音だと、あるいはこれが今の日本の政治の争点であり、大事な部分だという形で毎日毎日発信することもできる。だけど総理大臣がそこで話すことは真実なのか?
田原 そんなわけないですね。
野村 それを取材するのが、政治部の記者でしょう。ジャーナリストであったら本音を引き出すためにいろんなところを取材して、そのTVの表面で総理大臣あるいは閣僚が語る言葉の裏を取ることは本当に大事なことだと思う。これは今のような時代だから、ますます大事だと思うし、それが政治記事、政治報道の本道であるべきだと思うんですね。
田原 さっき道傳さんに言ったことは言葉がきつすぎたかもしれませんが、私はNHKに期待していることがあるんです。それはNHKはスタッフが大勢いる、時間をかけられる。だから一つはね、麻生さんが何か言った場合に、建前や嘘だって含まれるわけだから、その裏を取る。取って欲しい。
でもう一つ。民放には絶対出来なくて、NHKにできることがある。たとえばトヨタが派遣工3000人の首を切ったと。ところが、トヨタの持っている内部留保は今とっても高いという場合。
すると、「それはどうなんだ」と批判的に報道することは、民放は絶対取材できない。特に日経新聞は絶対に取材できない。それでもNHKにはできるんですよ。こういうことをどんどんやってほしい。どう?
道傳 現場に伝えておきます。