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150メートルの「格差」/埼玉県所沢市

150メートルの「格差」/埼玉県所沢市

 52年間、人口が増え続けている街がある。埼玉県所沢市。およそ34万人が住むこの街は、埼玉県西部に位置し、かつて綿織物の一大集散地として栄えた。何年前だろうか、所沢駅前の商店街に新しくマンションが建った。すると、連鎖反応のように次々とマンションが建ち始め、同時に商店街の店はシャッターを閉めていった。
 住む人が増える一方で活気を無くす商店街。今、この商店街でいったい何が起こっているのか。歩いてみることにした。

取材・撮影・執筆:勝又千重子
2008.8.13

0904_katsu1.jpg 「こんにちはー」。赤いランドセルを背負った少女が二人、店内に入るとすぐにひげ爺の元に駆け寄った。野口萌里ちゃんと、横田夏帆ちゃんは所沢小学校の四年生だ。「今日は暑かっただろう」。口元に髭を蓄えた三上博史さん(71)が眼鏡越しに優しいまなざしを投げかける。ここ、「野老澤町造商店(ところざわまちづくりしょうてん)」は市役所と商工会議所が共同で町作りのために商店街に設けた施設で、店内には週代わりで様々な展示が催される。ちょうど、所沢の歴史紹介コーナーがあり、授業で所沢の歴史を勉強した地元の小学生が、町の物知りひげ爺に会いにやってきたところだった。
 
 それにしても、驚いたのは僅か8畳ほどの店内に目的が違う人々が集い、談笑している姿だった。時計の針が14:00を指す頃。太陽ばかりが元気にアスファルトを照らし、時々人が通る程度の商店街の中で、店の扉を開くと同時に耳に届く笑い声は商店街の寂しさを忘れさせる。
 
  「地元出身のアーティストを応援する人たちのたまり場にもなっているんです」と店長の榊原美和さん(51)が言う通り、店の奥にはカラフルなポスターに混じって応援メッセージが貼ってあり、先ほどの小学生二人も目を奪われているようだった。
 
 平和な昼下がりの人々の集い。のんびりとした気分に浸っていた私に、「ただね」と榊原さんは言った。「商店街を元気にするためにイベントやお祭りを仕掛けて行こうと思うんだけど、商店街の人たち自身が乗り気じゃないんです。高齢化で店主さんたちも歳をとっていってるからかもしれないんですが」。彼女の視線の先には、店の外を杖をついてゆっくりと歩いて行く高齢の女性の姿があった。